最終更新日:2023年3月24日
株式会社陽進堂(旧 陽進堂ホールディングス)は薬の都と呼ばれる富山県で昭和4年に創業した製薬会社です。
陽進堂の製薬会社としての強みや評判、主な事業内容に加え、陽進堂に関するニュースについても調べてみました。
陽進堂の強み:原薬から製品製造まで
先発医薬品の後発品として製造販売されるジェネリック医薬品に早くから着目したのが陽進堂の特徴で、現在でも高い品質を誇るジェネリック医薬品を多数提供しています。
原薬から自社工場で最終的な製品製造まで一貫した生産を行っているため、品質を一定に保てる生産管理が可能なのが強みだといえます。
安定供給と安全性の強化
陽進堂では、生産品目を増加し、安定供給の強化を進めるために第5原薬工場を新設しています。
原薬は医薬品の主成分であり、高い信頼性が要求されますが、この第5原薬工場の新設で、5割増の製造体制を整備出来ています。
幅広い分野を手がける
陽進堂はエッセンシャルドラッグの分野も手がけています。
エッセンシャルドラッグとは輸液や透析に関わる製品のことを指します。
陽進堂の事業としては2013年から進出していますので、まだ歴史が浅い分野です。
入院中に点滴をうつことが少なくないですが、点滴の製造販売にも深く関わっています。
透析用の液剤や血液凝固阻止剤などの提供も行っています。
グッドデザイン賞を受賞
この進出に伴い、輸液製剤のスタンディングバッグを開発しています。
バッグに自立性をもたせ、使い勝手・視認性の向上をはかった2015年のグッドデザイン賞受賞の、輸液製剤のスタンディングバッグを採用し、独自の製造方法により、品質や機能を兼ね備えた輸液製剤を製造販売しています。
バイオ医薬品の受託製造にも力を入れている
インドのメーカーと共同で関節リウマチ治療剤のバイオシミラーを取り扱い、日本国内における販売を目標にしている最中です。
バイオシミラーは先発医薬品によく似た後発医薬品のことです。
後発医薬品の開発から販売まで行う
後発医薬品と言われ一般的に思い浮かべるものはなんでしょうか?
近年保険証にもシールを貼付することで意思表示が出来るようになりより身近になったジェネリック医薬品でしょうか。
- ジェネリック医薬品
- バイオシミラー
- ジェネリック医薬品とバイオシミラーの違い
上記についてそれぞれ説明します。
ジェネリック医薬品
これまで用いられてきた医療用の医薬品は先発医薬品である新薬と、後発医薬品であるジェネリック医薬品がありました。先発医薬品はしばらくの間は特許によって独占的に製造して販売されますが、特許期間が過ぎたものは他の会社でも同じ薬を製造して販売する事が可能となっています。
バイオシミラー
バイオシミラーがどういったものかと言うと、医薬品には低分子医薬品とバイオ医薬品という二つがあり、先発で開発されたバイオ医薬品は先行バイオ医薬品と呼ばれ、先発医薬品と同様、特許によって一定期間独占しての製造と販売がされます。そしてある特許が切れた後に他社でも製造出来るバイオ医薬品がバイオシミラーなのです。
つまり、バイオシミラーの立ち位置としては、ジェネリック医薬品と同じです。先行バイオ医薬品よりも薬の価格が安くなり、患者の薬剤に掛かる費用を軽減出来るというメリットがあります。
ジェネリック医薬品とバイオシミラーの違い
では両者の違いはどこにあるのかというと、ジェネリック医薬品は先発品と同じ有効成分が全く同じ量含まれていて、薬物動態や作用機序が生物学的にいって全く一緒であることが科学的に根拠づけられていれば、先発品と同程度の有効性・安全性を持つとみなされます。
一方で、高分子化合物を組み合わせてつくられるバイオ医薬品の後発品であるバイオシミラーは、一般の医薬品と比較して構造がはるかに複雑であることから、先発品と同等の有効性や安全性を持つことを証明するためには、ジェネリック医薬品の場合よりはるかにたくさんの種類の試験を行わなければなりません。その試験の中には、ジェネリック医薬品の同等性を示すときには不要な長期保存試験や効力の裏付け試験、臨床試験も含まれています。
また、厚生労働省に製造販売の承認を申請するときに提出する資料の数も異なっており、ジェネリック医薬品が多くて4種類程度なのに対して、バイオシミラーは多くて20種類と、新薬の承認を申請するときと同じくらいたくさん用意しなければなりません。
ジェネリック医薬品、バイオシミラーが医療費にもたらす影響
高齢化社会が進む日本において、増大する医療費は国全体の課題として様々な場面で議論されています。
医療費が高くなる理由のひとつは薬剤の費用です。薬が高額なのは、その医薬品が開発されるまでに多くの時間と費用がかかっている事にあるため仕方のないことではあります。
死亡理由の上位を占めるガンの特効薬がもし出来上がれば革新的な状況になるのは間違いありませんが、現段階では一般人には利用はできないほどの高額なものとなるでしょう。
一回の投薬で数百万円から数千万円かかってしまうような投薬は、現実的ではありません。そういったときに希望が持てる手段としてジェネリック医薬品が存在します。
前述したように後発医薬品であるジェネリック医薬品やバイオシミラーは、開発費や人件費が抑えられることによって、先発医薬品に比べ価格を大きく下げることができ、一般の方でも有効な薬を入手しやすくなります。
陽進堂は、新薬の開発やジェネリック医薬品の製造販売をおこなっている国内大手の会社です。
さらに強みでも紹介した品質管理に有利な、原薬の製造から商品の包装までを一貫して行う方法は研究開発だけでなく様々なコストカットに成功し、それを医薬品の価格に還元しています。
陽進堂のジェネリック医薬品は、本来の薬と同質の品質と安全性、有効性を持つとして国内外の多くの現場で信頼を得ています。
高齢化社会が進む日本の医療費削減に、大きく貢献していると言えるのではないでしょうか。
日本におけるジェネリック医薬品の供給不足
前述したようにジェネリック医薬品をはじめとした後発医薬品の普及は医療費に大きく関わってきます。
ジェネリック医薬品に関して、イギリス、ドイツ、フランスなどの医療先進国では普及率が70%を超えており、さらにアメリカでは90%を占めています。日本も79%と普及率自体は悪くなく、一般に広まってきたと言えます。
そんな中で実は2022年現在の日本において、ジェネリック医薬品の供給不足が起きています。
複数のジェネリック医薬品メーカーの製造上の不正が発覚する事態になり、全体の約4分の1にものぼる約2500品目の供給が滞っている状況に陥っています。この状態があと3年は続くと言われています。
事業内容
陽進堂が現在の姿で設立されたのは昭和37年で国内の各地に支店を構えています。
強みとして後発医薬品について触れましたが、主な事業内容は医療用医薬品の製造販売です。
医療用医薬品とは
医療用医薬品とは、ドラッグストアや薬局などで一般の人が気軽に購入できる市販薬ではなく、医師の処方が必要な薬のことです。
クリニックや病院で治療を受ける際に受け取ることができます。
以前はクロレラなどの健康食品を作っていましたが、昭和51年に健康食品製造部門を分離。
その際に誕生したのが、信和薬品株式会社です。
その他関連会社として陽進堂ホールディングス株式会社、エイワイファーマ株式会社、YLバイオロジクス株式会社があります。
社会貢献活動
陽進堂では、国内外で活動する支援団体に協力しながら、社会貢献活動を行っています。
これまでの活動や継続中の活動
- 1997年~
- 本社にて日本赤十字社への団体献血協力
- 2009年~
- 善意銀行活動に参加
使用済み切手・ペットボトルのキャップ集め - 2012年~
- 社内チャリチィーオクションよる寄付金
サークルクラブ協会に参加
子供たちの夢と希望をつちかう活動を支援
ストップエイズ機構に参加
アフリカエイズ孤児たちのサッカー活動を支援 - 2021年~
- 一般財団法人下村財団の設立
奨学生の募集を開始
製薬会社としての評価・評判
ネットの評判としては、医療用医薬品のメーカーですので、市販薬を販売するメーカーに比べるとあまり数は多く寄せられていませんが、クリニックや病院で処方された薬にメーカー名が書かれているのを知り、それに関する相談や質問が多少見受けられます。
これといったトラブルや不具合などは確認できませんので、信頼のある医薬品として治療に役立てることができると判断できそうです。
ジェネリック医薬品は先発医薬品に比べると莫大な開発費がかからないことから、税金の負担や患者の費用負担を和らげるメリットがあります。
陽進堂が作るジェネリック医薬品は、これからも活躍の場を拡大する可能性を十分に秘めているといえるでしょう。
ホールディングス会社としての強み
陽進堂ホールディングスは、下記の4つの会社で成り立っています。
- 株式会社陽進堂
- エイワイファーマ株式会社
- 信和薬品株式会社
- ケミカルバイオリサーチ株式会社
2017年4月に持株会社体制を導入したことで、陽進堂グループ事業会社を統治するホールディングス制へ移行。それぞれの得意分野を統合することによって、相乗効果を発揮できる事業展開となっています。
取扱製品について
陽進堂は400近い製品を取り扱っています。
主な取扱お薬一覧
- トラネキサム酸錠(2020年5月時点では出荷調整中。ニュース一覧をご参照ください。)
- テラ・コートリル軟膏
- コールタイジン点鼻液
- エタネルセプトBS皮下注
- バラシクロビル錠
- ピタバスタチンCa錠
- アリピプラゾールOD錠
- シロドシン錠
参考サイト:QLife陽進堂お薬一覧
陽進堂に関するニュース一覧
Biocon Biologics 社との日本国内におけるバイオ後続品の独占的販売権に係る契約締結
2022年9月30日付でウステキヌマブ及びデノスマブのバイオ後続品に関する独占的販売権契約を締結。本契約締結によりBioconが開発・製造する本剤の日本における独占的な販売権を取得することに。
バイオ後続品YLB217に関する日本における製造販売承認申請について
2021年2月2日、陽進堂は、日本国内で開発を進めていた持続型赤血球造血刺激因子製剤ネスプのバイオ後続品YLB217について、日本における製造販売承認申請を行った。
陽進堂ホールディングスが「ウクライナ人道危機救援金」に1000万円を寄付
陽進堂会長は、ウクライナ出身の社員がおり、侵攻は他人事ではない、と語った。県庁で行われた贈呈式にはその男性社員も同席し、一刻も早い終戦を願った。
トラネキサム酸、新型コロナで出荷調整
2019年3月26日までに陽進堂は止血剤のトラネキサム酸錠250mg、500mgの出荷を調整することを発表した。 新型コロナウィルスによる影響で、原薬メーカーが中国にあり、工場からの輸入、供給量が不十分になったためである。7月以降からは安定して供給できる予定。
関節リウマチ治療薬のバイオ後続品の製造販売承認を取得
2019年3月26日、陽進堂はYLバイオロジクス、帝人の2社と共に、関節リウマチ治療薬「エタネルセプト(商品名:エンブレル)」のバイオシミラー(開発コード:YLB113)の製造販売承認を取得した。
大塚倉庫で「医薬品共同物流」開始
2015年7月6日、大塚倉庫と物流における業務提携を発表し、国内で初めて医薬品の「共同物流」を開始した。これにより、医薬品の安定供給の強化し、国内医薬品物流の4分の1を占める国内最大の物流網になった。
味の素製薬と合弁会社設立へ
2012年12月25日、陽進堂と味の素製薬が合弁会社「エイワイファーマ株式会社」を設立するとのニュースが入りました。 合弁会社とは内国資本と外国資本の会社が出資元となり共同事業を行うために設立した会社の事です。 該当製品の国内販売は陽進堂が、海外販売は味の素製薬が行うとのことです。
設立会社
- 合弁会社名
- エイワイファーマ株式会社
- 代表者
- 代表取締役社長 佐藤 文正(現 味の素製薬株式会社専務取締役執行役員)
- 資本金
- 1億円
- 資本構成
- 株式会社陽進堂51%、味の素製薬株式会社49%
会社概要
- 公式サイト
- 陽進堂のサイトへ
- 社名
- 株式会社陽進堂
- 本社
- 〒939-2723 富山県富山市婦中町萩島3697-8
TEL.076-465-7777(代表)/FAX.076-465-7780